2017年09月06日(Wed)

ビワジュウの振り返り

ビワジュウから帰って、報告が遅くなってしまいました。
気をもんだ人もおられたことでしょう。
ブログ投稿の時間がなかったのと、少し整理してからと思って遅くなりました。

当日のGPSによる全コースです。(漕行70.2kmでした)
20170903_1.PNG

北風が強くなることは分かっていたので、西岸沿いにコースを取りました。
その中で北湖を横断して船木崎に至る区間は岸沿いではないので波風が大きく、危険な場合は湖西へ逃げ込むと決めていました。
時折スプレースカートも水をかぶる程度(波高50cmほど)に育った波の中でのパドリングでしたが、風は比較的安定して吹いており危険性はありませんでした。
波に乗った快適なダウンウィンドパドリングも少しの間楽しむことができました。
とにかく安定の悪いステラーS18R でも転びそうな場面なく北湖を横断して船木崎に到着しました。

ただ、皆さんご存知のように100回に1回、1000回に1回の大きめの波が来た時にバランスが崩れてブレースで対処することも起きます。
また波に乗ったカヤックが急旋回してバランスを崩すこともあります。
安定したカヤックであっても、ブレースなどの基本の練習とラフ水面で漕いだ経験がないと咄嗟のパドルが出ないまま沈します。

北湖を横断して船木崎で上陸し、ビワゴンさんへ現在位置をメッセージしていると、後続のOさんも到着。
彼はバランスの良い人で、SK-1というなかなか難しい船で一度も転ぶことなくゴールしています。
しばし休息の後、後続は来ていないようなので一緒に出発しました。
IMG_20170903_094350.jpg

後続を待たずに出発したのは、ビワジュウは集団のツーリングではないからです。
70kmもの距離があるため、ツーリングだと一番遅い人のペースになり、誰もゴールできません。
ばらけた状態でも各自がレスキューとリタイヤのマネージメントを行い、携帯で連絡を取り合いながらゴールを目指すルールでした。
リーダーのビワゴンさんへ通過状況を随時連絡することが義務付けられていました。

船木崎から先は西岸沿いに進めば波風の影響が少ないので、後は楽勝だと思っていましたが、これは誤算でした。
琵琶湖の沿岸の利用状況により、岸の間際を航行できず岸から離れてしまいます。
おまけに沿岸を高速で走るジェットスキーやウェイクボードの船も多く、それらのおこす波と風波との合成波を受けつつの漕行となりました。
琵琶湖ならではの特殊な状況と言えるかもしれません。

波に苦労しつつ、やっと琵琶湖大橋にたどり着きます。
IMG_20170903_134959.jpg
漕行50kmに達して、ここでの体調は足がつり、腿の前部の筋力が落ちたために後傾姿勢になり、漕力はガタ落ちの状態。
長時間の風波中のパドリングで消耗していますが、体力そのものは疲弊していないので、漕行には問題ありませんでした。
「いつ転んでもロールか再乗艇できるな」、と自分の状態を再確認して進みます。

ここまで来れば先は楽になると思っていましたが、南湖エリアでも苦労は続くのでした。
琵琶湖大橋を過ぎると東風に変わり、西岸を進むカヤックは東からの育った波に遭遇しました。
なにか約束を裏切られたような気分です。
最終目標の瀬田の唐橋へ向かうため、どこかで東岸へ渡る必要があります。
しかし南湖中央部は船の往来が多く危険に見えたので、このまま西岸沿いに進み、安全なタイミングを見て東岸へ渡ると決めて進みます。
瀬田方面の橋がはっきりと見えたところで、ちょうど船の往来がないタイミングがあり東岸へ渡りました。
東岸へ渡って、最初に近づいた橋を瀬田の入り口だと思って通過したら間違いで、矢橋帰帆島の橋でした。
間違いと分かってGPSで場所を確認し、瀬田の入り口へ向かいます。
ここで岸からの返し波に遭いました。
返し波とぶつかった波は急角度で立ち上がるので行程中で一番転びそうな場面だったと思います。

4時52分に最終ゴール「瀬田の唐橋」に到着。
到着の報告をメッセージで送り、後方のリタイヤの詳細と連絡が取れない一名の捜索が始まっていることを知りました。
後続のSK-1も到着、最終ゴールへ到達できたのは2人だけでした。
2人が無事に漕ぎ切ったことをねぎらうのもつかの間、行方不明の彼との電話連絡を試み、無事を祈るばかりでした。

万一、漂流してもこの時期の水温なのでカヤックにつかまってゆっくり泳げば東岸へ流れつくだろう。
しかし、予想に反して夜になっても連絡が入らないままです。
水温は暖かいので朝まで持ちこたえるだろうという観測はありましたが、早めに上がっていて欲しいと深夜まで東岸を見回ったり。

翌朝、無事に救出されたと連絡が入り、安堵しました。
北湖横断の途中で沈して、漂流するに至ったようです。
ビワゴンさんはほかの一名を上陸させるために今津へ向かっていたので、彼は単独の漕行中でした。
セルフレスキューも電話連絡もできなかった経緯はよくわかっていませんが、またいつか機会があればお話しすることとしましょう。
ビワジュウは6回目にして、遭難者を出してしまった。
参加者として、いろいろ反省しています。
また、水温の高い時期を選んだのはビワゴンさんの最後の安全弁、最悪の漂流となっても体力の低下が少なく、広い琵琶湖といえども流される範囲は限られている、命だけは助かるという計算もあったと思います。
いづれ、状況が整理されて改善すべき点などが見えてくると思いますので、カヤッカーの安全のための資産として、役に立てればと思います。

今回は、琵琶湖の難しさの一面を知ることができた、素晴らしい経験でした。
このチャレンジに参加させていただいたビワゴンさんに感謝します。
また次回のビワジュウにチャレンジできれば、琵琶湖の別の顔も見られるんじゃないかと思っています。
またチャレンジする?
まだ数年は大丈夫、いけるさ。

--- 2017.11.09 もう一度振り返って気が付いたことを追記します ---

この記事の続編として総括的なことを書きました。  →   ビワジュウ2017の総括

KAYAK~海を旅する本」(Vol.58/2017年秋号)にビワジュウ2017の報告が掲載されました。

50kmで後傾姿勢になってしまったことについて。
シート後方のバックレストですが、自分はバックレストを使わないので取り外しています。
(腰の後ろは常に空間が開いています)
普段は問題なかったのですが、今回の長距離ではその姿勢を保つ筋力が限界に達したようです。
これで数時間漕いでも問題なかったのですが、未経験の長距離を漕いでバックレストも必要になることが分かりました。

未経験のことを想定して対処するって、未経験だけに難しいと思うんだ。
けど、できるだけ事前にいろんな想定をして準備することは大切ですね。

ちなみに、今回の使用艇ではロール、再乗艇(フロートなし、フロート使用の両パターン)を何度も確認して、荒れた海面で沈しても漕ぎ切る自信はありました。
スペアパドル、ビルジポンプは、シーカヤックでは定番化された装備です。
まず使用しないけど万一のために必ず積む。
あとはトーイングに使える細いロープとホイッスルは、いつもPFDに入っています。

それでも抜け、想定外があったということです。
想定外を想定内にする努力、必要ですね。

想定外が起きたら... に備えての緊急連絡の確保
琵琶湖なので携帯電話(連絡用とGPS用)だけで緊急連絡は確保できましたが、もし外海に出る可能性があれば携帯電話は通じない。
PLB:遭難信号発信機を準備していたでしょうね。(まだ未登録ですが入手済み)
あるいは衛星携帯電話の インマルサット 、以前、出雲方面のツーリングでレンタルした記事も書きました。
ここ アクアテック さんで、お手頃価格でレンタルできます。

基本的にチキン野郎なんで。
予想には必ずブレがある、想定外も起こる、増してや、海の経験値は限りなく少ない。
漕ぎだす前にチキン野郎になることは健全なことですよね。
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